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十六時間前、米国航空機一機が日本陸軍の重要基地である広島に爆弾一発を投下した。その爆弾は、TNT火薬二万トン以上の威力をもつものであった。それは戦争史上これまでに使用された爆弾のなかでも最も大型である、英国のグランド・スラムの爆発力の二千倍を超えるものであった。
日本は、パールハーバーで空から戦争を開始した。そして彼らは何倍もの報復をこうむった。にもかかわらず、決着はついていない。この爆弾によって、今やわれわれは新たな革命的破壊力を加え、わが軍隊の戦力をさらにいっそう増強した。同じタイプの爆弾が今生産されており、もっとはるかに強力なものも開発されつつある。
それは原子爆弾である。宇宙に存在する基本的な力を利用したものである。太陽のエネルギー源になっている力が、極東に戦争をもたらした者たちに対して放たれたのである。
原子力の解放が理論的に可能であるということは、すでに一九三八年以前、科学者が一般に信じていたことである。しかし、その実際の方法についてはだれもわかっていなかった。けれども、一九四二年までに、われわれは、ドイツが念願する世界の隷属化の手段としての兵器に原子力を加える方法を発見するため、懸命の努力をしていることを知った。だが彼らは失敗した。われわれは、ドイツが(大戦)末期に、それも限られた数のV−1号やV−2号しか入手できなかったことについて神に感謝しても良かろう。そして、ドイツが原子爆弾をまったく入手できなかったことについては、さらにいっそう感謝してもよかろう。
研究施設での戦いは陸・海・空の戦いと同様われわれにとって生命にかかわる危険をはらむものであったが、今やわれわれは研究施設での戦いに勝利を収めるとともに、それ以外の戦いにも勝利を収めたのである。
パールハーバー以前の一九四〇年を起点として、戦争に役立つ科学知識が米国と英国との間で共同利用され、われわれの勝利に対する幾多の貴重な貢献が、そのような取り決めによってもたらされた。そのような全般的政策のもとで、原子爆弾に関する研究が開始された。米国及び英国の科学者が協力するという形で、われわれはドイツとの発見競争に入った。
米国は、必要とされる多くの知識の分野で多数のすぐれた科学者の力を利用することができた。また、米国は計画実現に必要な巨大な工業力と資金力をもち、他のきわめて重要な戦争遂行義務を不当に損なうこともなく、計画に充てることができた。米国では、研究施設および製造施設はすでに実質的な作業を開始していたが、それらは敵の爆撃圏外にあった。他方、その当時、英国は不断の空襲にさらされ、侵攻される可能性に依然として脅かされていた。このような理由から、チャーチル首相とルーズベルト大統領は、米国で計画を進めることが賢明であるとの合意に達した。現在われわれは原子力の生産に向けられている二つの大規模施設と、それよりも規模の小さい多数の施設を持っている。建設の最盛期における労働者は十二万五千人にのぼり、六万五千人を超える人々がこれらの施設で二年半働いた。自分が何を生産してきたのかを知っている人はほとんどいない。彼らは、大量の原料がそれらの施設に搬入されるのを見ているが、そこから搬出されるものは何も見ていない。爆発性充填物の実際の量は極めて僅かだからである。われわれは、史上最大の科学上の賭けに二十億ドルを費やし、そして勝ったのである。
しかし、何より驚嘆すべきことは、この事業の規模や機密でもなければ費用でもなく、科学のさまざまな分野において多数の科学者がもっている、限りなく複雑な知識の断片を、実現可能な計画にまとめあげた科学者集団の業績でおる。そして、それに劣らず驚嘆すべきは、いまだかつて成し遂げられなかったことを成し遂げる機械と方式を設計立案する企業の能力であり、また、それらを操作運用する労働者の能力である。その結果として、多くの人々の頭脳の所産が期待通りに目に見える形で実現し、その機能を発揮したのである。科学者も企業経営者も米国陸軍の指揮のもとに作業したが、それは、驚くほどの短期間に、科学の進歩にかかわるきわめて多様な問題の処理に無類の成功を収めた。世界でこのような共同作業を組織しえた例が他にあるかどうか疑わしい。これまでに達成されたことは、組織化された科学の業績としては史上最高である。それは、極度の重圧を受けながらも失敗することなく達成されたのである。
今やわれわれは、日本のどの都市であれ、地上にある限り、すべての生産企業を、これまでにもまして迅速かつ徹底的に壊滅させる態勢を整えている。われわれは、日本の港湾施設、工場、通信手段を破壊する。誤解のないように言えば、われわれは、日本の戦争遂行能力を完全に破壊する。
七月二十六日付最後通告がポツダムで出されたのは、全面的破滅から日本国民を救うためであった。彼らの指導者は、たちどころにその通告を拒否した。もし彼らが今われわれの条件を受け入れなければ、空から破滅の弾雨が降り注ぐものと覚悟すべきであり、それは、この地上でかつて経験したことのないものとなろう。この空からの攻撃に続いて海軍および地上軍が、日本の指導者がまだ見たこともないほどの大兵力と、彼らには既に十分知られている戦闘技術とをもって侵攻するであろう。 |
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(中略) |
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スチムソン長官の声明は、テネシー州ノックスビルに近いオークリッジおよびワシントン州パスコに近いリッチランドにある(施設)用地、ならびにニューメキシコ州サンタフェ近くの施設に関する諸事実を明らかにするであろう。これらの用地の労働者は、史上最大の破壊力の生産に使用される原料を製造してきたけれども、他の多くの職業にともなう危険以上の危険にさらされることはなかった。彼らの安全について最大限の配慮が払われてきたのである。
原子力を解放することができるという事実は、自然の力に対する人間の理解に新しい時代を迎え入れるものである。将来、原子力は、石炭、石油、降雨から得ている現在の動力を補うことができるかもしれない。しかし、現在のところ、原子力は、石炭、石油、降雨と商業的に競争しうるような規模では生産できない。それが可能になるまでは、長期にわたる徹底的な研究が必要である。
世界の人々に科学知識を提供することを差し控えるのは、決してわが国の科学者の習性ではなかったし、政府の政策であったこともない。したがって、通常であれば、原子力研究についてすべてが公表されることであろう。
しかし、現在の状況のもとでは、突発的な破滅の危険からわれわれと世界の他の諸国民を守るための可能な方法についてさらに検討してみるまでは、生産過程の技術面やすべての軍事的利用方法をあきらかにするつもりはない。
私は、米国議会が米国内における原子力の生産および使用を管理する、しかるべき委員会の設置をすみやかに検討するよう提案するであろう。私は、どのようにすれば原子力を世界平和の維持に資する、有効かつ強力な力にしうるかについてさらに検討したうえ、議会に対し、あらためて提案を行うであろう。
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一九四五年八月六日 |
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